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またゲームで1対3でみんなから攻撃されたし。
親は怖いし。
僕っていつも誰かの言いなりだよ。
あれ?
これ何だろう?

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男の子に気づいた天使はたずねる。
もしかして俺見えちゃってる?
男の子はうなずく。
まいったなぁ。
見えないと思ったから油断しちまった。
つぶやく天使に男の子がきく。
天使さんも嫌なことあったの?

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なんか君も嫌なことあったみたいだな。
話す気はないのか?と天使。
男の子が黙っていると
話したくないなら構わないさ。
でもそれなら俺だって話さなくたって…。
天使がそう言いかけたとき男の子がつぶやいた。
りんご。
りんごがどうかしたのか?
天使がたずねると男の子はためらいがちにこたえる。
いや、そのりんごが重いのかなと思って。

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天使は
そりゃー重いさ。
といっても手が痛いとかそーゆー意味じゃねーぞ。
りんごを心の底から欲しいと思った人たちに届けなければならないんだが…。
実はほとんどが毒りんごでさ。
とため息をついた。
男の子が不思議そうな顔をしていると天使は言った。
説明する気はなかったんだけどさ。
誰かに心配されたの初めてだったからさ。
ちょっと嬉しかったからお礼に説明するよ。

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例えばきみがテストでいい点を取りたくて
でも勉強面倒くさいと思ってたとする。
その気持ちが強いとね。
テスト中にうっかり消しゴムを転がして
隣の人のテストが見えちゃったりするんだ。
毒りんごって例えばそんなことさ。
人々の欲望のことなんだよ。
男の子はびっくりして言った。
毒りんごが人々の欲望?
ゆがんだ欲望があると
やばい方法で夢がかなっちゃうってこと?

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そういうことさ。
天使は短くこたえた。
どうしたの天使さん、うつむいちゃって。
男の子がたずねると
りんごを食べて倒れてしまった人の
心の叫びが聴こえてきたのさ。
と天使。
そう言われて耳を澄ますと
男の子にも悲しげな女性の声が
聴こえてくるのだった。

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子どもを育て
親を看取り
気づけば私に迫る老いの手
何のために生きてきたのか
今からつかめる
夢はないのか
伸ばした手に差し出されたりんごを
消化する力は私にはもう…。

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男の子がつぶやく。
夢かぁ。
どんな夢だったんだろ。
かわいそうだとは思うけど
僕には夢なんて縁のない話だよ。
天使がこたえる。
画家になりたくて努力してたんだ。
でも気力も体力も若いころみたいに十分でなくてね…。
それよりさっきから気になってたんだが…。
君みたいに毒りんごに縁がないと思ってるような人こそ
ある時急に何かのきっかけで毒りんごを食べだすものなんだよ!
男の子はドキッとして言った。
ええ!
それじゃ僕このままだといつか毒りんご食べて倒れちゃうかもしれないってこと?
ねぇ何とかならないの?

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天使がこたえる。
おいおい無茶言うなよ。
まぁでもまったくどうしようもないというわけでもないんだが…。
難しい話でね。
きみにはまだわからんだろうよ。
男の子が身を乗り出す。
なんか手があるんだね!
ぜひ聞かせてよ。
天使は語りだす。
賢者と呼ばれる人達がいてね。
毒りんごの上手な食べさせ方をアドバイスしているのさ。
でもすべての賢者と呼ばれる人達が
毒りんごの上手な食べさせ方を教えてるわけじゃない。
毒りんごの扱いには熟練の技がいるからね。
男の子が思わず声を上げる。
ええ~!
毒りんご食べちゃって大丈夫なの?

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天使は続ける。
毒りんごの毒は、よ~くみるとりんご全体に均一にいきわたってるわけじゃない。
毒が薄いところもあれば濃いところもある。
だから毒の薄いところを選んで
ひと切れだけ食べてもらうんだ。
そうするとその人は自分の夢がかなうかも、って元気になるんだ。

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天使はやっぱりという様子で言った。
ほーら言わんこっちゃない。
さ、俺もさっさと仕事に戻らねーと。
男の子は天使にすがった。
待ってよぉ。
僕だってもう小学生だ。
もーちょっとだけやさしく説明してくれたらきっとわかる!
お願いだからもう少しだけお話してよ。
僕の未来がかかってるんだよ!

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天使はため息をついた。
は~まいったな。
わかったわかった、
とりあえず手を離してくれ。
しばらく考えこんだ後、天使は続けた。
例えばきみがサッカー選手になりたいと
お母さんに言ったとしよう、
そんなの無理に決まってるって言われたら腹立つだろうが、
じゃあ頑張って!と言われてもなんだかもやもやしねーか?
それはまぁそうかも。
男の子はうなずく。
じゃあなんでサッカー選手になりたいの?
ときかれたらなんてこたえる?
天使の質問に男の子はこたえる。
そりゃかっこいいからだけど。
まーそんなとこだろーな。
で、どういうところがかっこいいのさ?
天使がたたみかける。

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敵の全く予想しなかったところにパスを出せるとこ。と男の子。
天使は感心したように言った。
おぉ。なかなかおもしろいこと言うじゃねーか。
それじゃ聞くが、
相手の全く予想しない技が出せるのってサッカー選手だけかね?
相手の予想をいい意味で裏切れる人っていうと例えば…?
つい最近きみがびっくりした人っているかね?
男の子は思い出しながら言った。
そうだなぁ…。
この前買った食玩のミニカーがめっちゃリアルだった。
家族で何となく入ったレストランの料理がめっちゃおいしかったな。
そうそう、そういう人たちもかっこいいと思わないか?
と天使。
男の子がうなずく。
ほ~。
考えたことなかったけどそういう人たちもいいね!

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天使がうなずく。
だろ?
こんなふうに探ってゆくと
あれ?サッカー選手じゃなくてもいいじゃん。
という気になってくる。
そうやって自分の夢をかなえるためのいろいろな道を考えてくれる
それが賢者の役割なのさ。
それが毒りんごの毒の薄い部分を選んでくれるってことなんだ。
男の子がたずねる。
おぉ、これなら夢をかなえる方法がいっぱいあるから
実現しやすい夢も見つかりそうだね。
でも夢をかなえるために毒りんごを食べなければ
苦しまなくてすむんじゃないの?

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だよな。
と天使。
だけど人の心からの望みである毒りんごを食べなければ
なんにもしたくなくなっちまう。
仕事や勉強を投げ出したくなって
そのために例えば病気になるという
別の毒りんごを引き寄せかねないのさ。
そうだ、きみにも毒りんごあげようか?
男の子が慌てる。
えっ。ちょっと待って心の準備が。
冗談だよ。
きみに毒りんごが届くのはまだ先さ。
と天使。
それって楽しみにしてていいんだろうか?
男の子は思わず空を仰いだ。




お読みいただきありがとうございました。

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